うろこと翼

まるで君は
空を飛べない鳥のよう

持て余すフリッパーを
陸の上ではためかせている

ずっと氷の世界の中にいて
見失いそうになる太陽
空のようで空でない毎日

凍てつきそうな毎日を離れて
これから僕と
何かを見つけに行かないか

まるで僕は
水の中を泳げない魚のよう

屋根よりも少し高い
五月の空にいて
限られた風の中しか泳げない

形だけのうろこが時々
かなしくなって泣いている

ないものねだりの毎日じゃ
どこにも飛べない
泳げやしないから

君の翼と僕のうろこで
何かできることを探さないか

いつものハウスの屋根の上で
黒い猫が青く光っていた

鳥でもない魚でもない世界へ
季節を超えた新しい世界へ
僕たちも今を振り切って行く

君の翼が生かされる
僕のうろこが生かされる
青い新天地の僕たちの自由へと









MYDEAR/新作紹介・掲載

*どうもありがとうございました*

本のお知らせ 「アンソロジー風XI  2014」 竹林館

アンソロジー風 XI 2014 131の詩の華
          


画像






 詩を朗読する詩人の会「風」 のアンソロジー詩集です。
  40周年になる記念の一冊に、おじゃまさせて頂きました。



                   
        「竹林館HP(検索→竹林館)より転用させて頂きました。」




                         以上、本のお知らせでした




             

バスストップ

バスがゆく
乗り過ごした一台のバスが

ああ乗り過ごして初めて
残された影の形が見えてくる

いつもならこの次と
すぐにあきらめられるのに

あきらめきれないことが
あってすぐのバスは
なんてかなしいのだろう

そしてまたすぐに
追いかけても戻らないものが
僕の胸に迫ってくる

だけどあのバスに
乗りたかったなんて絶対言わない

待ちぼうけの後に来てくれた
バスのステップを
ぐううっと踏みしめなきゃ

再出発のクラクションが鳴る
あきらめや後悔っていう
言い訳の乗車なんていらない

あきらめよりもすぐそばにある
これからというバスストップ
遅れても再び訪れる時の始まり

青い月夜のゴミ箱ブルース

誰も振り向くことないゴミ箱は
あたりまえなのですが
ゴミを捨てる時しか振り向かない

捨てるものはありませんか
そんなこと急に言ったら
通り道の人はみんな急ぎ足で
僕を避けてゆくだろう

僕にできることは何ですか
誰かのゴミを受け取ること

それ以上何かを
求めてはいけないのか
どこから見てもゴミ箱だから

青い月夜のゴミ箱ブルース
もう終電も終わった街の
誰もいない道のはしっこ

うわずった声を
夜に震わせながら歌っている

突然僕を抱きしめて泣いた
よっぱらいの涙
初めて受けとった人のきもち











スラッシュ

真昼の空に映えるほどに

あどけなく笑うあなたも


陽の当たらない道のように

湿っぽくしょげるあなたも


あなたもしくはあなた

あなたそしてあなた

全部そのままのあなた

同じ暮らしの中で生きている


もしも誰かがあなたの前に

心ない線を引いても


ずっと前からあなたのこと

知ってるわたしがいるから

どうか泣かないで


あなたもしくはわたし

あなたそしてわたし

わたしたちを結ぶスラッシュ


誰にも消せやしない

ずっとあなたのそばにいさせて





.

サーカスはこない

サーカスはこない
あの頃のみんなの遊園地は
カラカラの更地になったから

子供の頃に見つめた
ライオンも空中ブランコも
どんなに目を凝らしても見えない

今はただ呆然と広がる
荒れ放題の草地に
はかなく滲んだ夢のあと

輝かしい夢から
取り残されたように
壊れたコーラの瓶が
くすんだ外灯に光っていた

退屈な日曜日

誰も来ない
これからもないこの場所に
僕たちは辿りついていた

薄青く霞んだ月の遠くから
淡い海の風が吹いてきた

サーカスはこない
だけど日々のピエロになりそうな
空しいテントの中の僕たちはいる

悲しいだけのピエロじゃなくて
不器用だけのピエロじゃなくて
互いに流れる涙を笑わせるくらい
おどける強さをこの手に下さい

遊園地は終わらない
僕たちのサーカスはこれから

咽び泣く炎の輪をくぐりぬけて
笑うライオンに会いたい

暗い夜空のテントに
張りつめた空中ブランコ

手を滑らせても
明日を一回転して笑わせる
愛しいサーカスのピエロになりたい

悪いことばかりじゃないって
おどけてみせたあの日の
不器用な君をずっと愛している

巡り巡れ僕たちの遊園地
眩しいテントを星空に立てて
終わらないサーカスを呼んで









MYDEAR/新作紹介・掲載
*どうもありがとうございました*




あたりまえの神様




遠くからの汽笛に振り返れば

夕暮れの中の線路と

その上を走るまっすぐな電線


かろうじて電線にひっかかって

止まっているかのように映る

おちゃめな今日の夕日が

疲れた僕をクスリと笑わせてくれた


ふいに胸に当てたひだり手

気づきながら心に続いて行った


僕は今日も生きているよ

毎日意識しなくても

そのままに暮らしてゆけること


普通列車がゆっくり近づきながら

いつもの音を響かせていた

そしてゴトンゴトンと通り過ぎて行った


あたりまえの神様

慣れないことに失敗の毎日

でも僕は今日もここにいるよ


ほんの少しの失敗

でも今はまだちょっと痛いから

心の膝小僧に絆創膏を貼ることだけ


それひとつだけ許してほしい

それ以上は何も望まないから

明日も僕のそばにいてね


後ろ姿しか見せない神様

それはもう明日が待っているから

前を向かって歩き始めているから


今日もここにいさせてくれてありがとう

あたりまえと思えるような

暮らしのリズムを僕にもありがとう


見慣れた夕暮れの中の

線路と電線の風景の間を

溶け合いながら進む列車のように


ゴトンゴトン

ゴトンゴトン


いつか空の真下の鼓動を

何ひとつ迷うこともなく

通り過ぎていけたらいいね


明日もきっと目覚めて

ひとつの空の下に暮らしてゆく


あたりまえの昨日と今日が

ひとつになって

また明日につながりますように


何にも走っていない

夕暮れの線路に向かって

滲む夕日がゆっくりと動いてゆく


今日もあたりまえの神様は

大きな後ろ姿を見せながら

明日に向かってゆっくりと歩いている


空の真下の数え切れない人に景色に

無意識の夕暮れを響かせながら

「さあ ついておいで」

















春の宅配便

トラックいっぱいの春がくる
トラックいっぱいの春がくる

生まれて間もない鳥の声
小川を流れる水の音
はじけそうな蕾の色どり

積みきれないほど
つぶらな始まり
ましろな荷台に光ってる

トラックいっぱいの春がくる
らららはなうたかぜ運転手
冬のトンネル超えてくる

トラックいっぱいの春がくる
らららはなうたかぜ運転手
あちらこちらららで春がくる



                               (一部改編)



笑え笑え山笑え

春 にらめっこ
君がはやく笑ってほしい
笑え笑え山笑え

ずっと待ちわびている
今はまだ長い夢を見ている君よ

しんと静まり返った山々
朝一番の冷え込み

凍える風に擦れながら
冬の音色を奏で始める
続く枯草の休耕田

そして憂いのように
広がる厚い雲から
また聞こえてきた小雪の音

こころの奥深くに眠るものが
だんだん空へと膨らんで
はちきれそうな愛になったら

きっと一面に広がりだすよね
そこぬけにまぶしい
君の笑い声が

人も鳥も猫も花も
空も川も道も田んぼも
ぜんぶぜんぶ冬のぜんぶ

長い夢から覚めて
笑い始める君のこと
ずっとずっと待ちわびている

あっぷっぷう
あっぷっぷう
笑え笑え山笑え

君がはやく笑ってほしい
ずっとずっとにらめっこしているよ
とびきりの変顔したくなってしまうよ

君がはやく笑ってほしい
今すぐにでも僕たちは
君のこと思いきり笑わせたい





MYDEAR/新作紹介 掲載
*どうもありがとうございました*












詩誌のおしらせ  詩誌『回生』

 詩人、中村正秋氏と小熊昭広氏の二人詩誌、詩誌『回生』第こ号(通巻第34号)が発行されました



    

2014年3月16日、詩誌『回生』第こ号(通巻34号)が発行されました。仙台を中心とした県内各所にフリーペーパーとして設置されているそうです。現在入手できる場所は、別欄のリストの通りです。A5サイズ全60頁となっているそうです。(今号、ご厚意により、詩一篇、おじゃまさせて頂きました。)

なお、ホームページ「詩誌『回生』 中村正秋 & 小熊昭広」からも、詩誌『回生』こ号は、PDFファイルとしてダウンロード可能だそうです。PDF版は、リンクを埋め込んでおりますので、タブレット等の電子機器で読んでいただけると、各種情報へ飛べるそうです。

   ( 検索→詩誌回生  )




  詩誌回生を置いている場所(2014年3月16日現在)   

・パソコンパーツショップ「ガレージコム」(群馬県富士見村)

・書本&cafe magellan(仙台市春日町7−34)

・喫茶ホルン

・宮城県立図書館(地域情報室)

・cafe haven't we met
(国分町3丁目9番 第5佐々木ビル3F)(今後、置く予定)

・せんだいメディアテーク (今後、置く予定)

・仙台文学館

・宮城県美術館 (今後、置く予定)

・Book Cafe 火星の庭 

・蔵人(くろうど)(村田町)

・大河原町図書館


※各場所には、15部程度(ガレーコムは除く)しか置いておりません。
すでに無くなっている場合やまだフリーペーパーコーナーに置いていない場合がありますのでご注意ください。



              (引用元 詩誌回生 ホームページ )



                     よろしくどうぞ。 

いのちのソリチュード

しあわせのありかは
誰にもわからない
気づいた時
初めてそこにあるから

今すぐ巡り会えないけれど
いつか巡り会いたいと思う
あなたのそのまなざしは
やがて晴れた空に届く

動かなかった雲の切れ間から
あなたの足もとに
陽ざしが淡い影をつくる

乗り越えてゆく
一秒ごとのロンリネスが
あなたをやさしくしている

静かな時の鏡で向かい合い
愛しさに満ちた
あなただけにしかない
いのちをみつめて

ずっとずっとそばで
お気に入りの本も
大好きなメロディーも
どうにかして
あなたを支えようとしている

さよならロンリネス
はじめましてソリチュード
誰にもとがめられない
踏み込めない自由な世界へ

膝を抱えていた日々
あなたの過ごしてきたすべての涙は
いつか必ずしあわせのありかになる

そっと掬い上げてくれる
どんな言葉よりもうつくしい
あなただけのやさしさになる

あなただけに吹き渡る未来の調べ
愛のたからもの
いのちのソリチュード






励まし

うつむく心に向かい合って
肩を組んでくれた人がいた

うつむく心に向かい合って
一緒に泣いてくれる人がいた

生きていくって色々あるね
やり切れない思いを
温かい心で包んでくれた人たち

電話の向こう側で
ずっと話を聞いてくれた人

長い長い手紙を
便箋に書いて届けてくれた人

長椅子の席を詰めて
そばにおいでと手招きしてくれた人

顔を伏せた夕暮れの部屋に
そっとあかりを灯してくれた人

ひとりひとりに
ひとつひとつの悩みがあるように

ひとりひとりに
ひとつひとつの励まし方があるね

眠りたくても眠れない夜
眠れるまで何も言わず
そばにいてくれた人もいたよ

ここまで生きてこれたのは
たくさんの励ましがあったから

うつむく心に向かい合ってくれた
たくさんの励ましがあったから

ひとは励まし励まされ
励まし合えたなら
涙を明日にかえることができるね

どこまでもありがとうの光が降る
どこまでもありがとうの風が吹く
どこまでも優しかった人たちに届けて






























バウムクーヘン

たとえ
僕がが立ち止まっても
この町は何も変わらないだろう

たとえ
僕がここにいなくても
この街は何も変わらないだろう

なのに
こんなに苦しい時も
どうして僕は街を生きているのか

なのに
こんなに泣きたい時も
どうして僕は街を生きているのか

答えなんて決められない
だけどいのちある限り
ここに生き続けてゆけること

それだけは生まれる前から
何となく知っていたような気がする

人生というバウムクーヘン
香しきいのちの周辺
時に甘く切なくほろ苦い風の味

口にしようかと迷っている間に
モノクロのポーカーフェイスに
ほろほろと溶けてゆく音階たち

あえて声にすることもない
ありきたりと流されそうだけど
少しだけ痛いと感じていた
それぞれの日々の出来事

数え切れないほどの
経験という時が
生まれた日々に重ねられてゆく

この町のまん中に大きく開かれた
見渡す限りの人の輪の終点に
太陽が見えるって信じている明日

砂糖菓子のように
甘い時間ばかりじゃない日々

疲れた僕の心に
そこから差し込んでくる
まばらの粉雪のような光たちよ

どうか艶やかに艶やかに
日々の苦しみを包んでください
日々の悲しみを包んでください

甘いようで甘くない
控えめなお菓子のように
今日も誰かが誰かの心を包んでいる

そんな心がある限り
もう少し生きてみようって思える
まだまだ捨てたものじゃないと思える

いてもいなくてもわからない
ちっぽけな存在であったとしても
いのちあるから今日も生きている

街の中のバウムクーヘンは
僕の中のバウムクーヘンは
これからも止めどなく重ねられてゆく












涙のエンブレム

何もかも失くしてしまうのかと
真昼の断片に立ち尽くした
半信半疑の白夜のようなあの日

目の前にそびえ立つ
鉄塔の影さえ
夜の日時計のように時を拒んだ

もうこれ以上
どこを探しても僕の中に
真昼の僕はいないと感じていた

走り続けてきた靴の秒針は
今は履き捨てられるように
乱れては堕ちてゆく

何かを確かめるために
傷だらけの裸足で
これまでをなぞる勇気なんて
どこにもないけれど

まだ微かに息をしていると
感じられる涙だけは
乾きすぎた頬を通り過ぎながら
見えない鼓動をなぞってくれた

胸に零れ落ちてくるものが
すべてを物語ってくれる
何にも言えない今日の代わりに

そしてとどまりながら滲んで
見たこともない明日へ響けと
胸元で大きく輪を放ってゆく

全部失くした時から
もう一度始まるものがある
生きてゆく人のみなもに

時の重さで
折れそうになった姿に
舞い降りてくる真昼の陽ざしが
僕のために見つけてくれたものは

涙のエンブレム
泣いて泣いてまた泣いて
哀しみの終わりから始まり
何もかも全部失くしてしまえ

閉ざされていた胸の闇に
零れ落ちては
煌煌と心の無地に響いてくる

まっさらな明日に
顔をあげることのできるのは
まっさらな君しかいない










遠くへ

道なき道のこの先に
はかり知れない遠くがある

どんなに迷い道しても
どんなに遠回りしても
辿りつきたい遠くがある

ただ想い続ける
それだけで
広がりだす遠くがある

夢を知ってしまったから
どうすることもできない
後戻りなんてできない

涙してもくじけそうでも
飛んでゆきたい遠くがある

見渡した大地の広さを
突き抜ける空の高さを
どんなに超えても
足りない私だけの遠くがある

それは神様もしらない
夢の奥の奥にしか
生まれない宇宙のなか

特別なシューズも翼も
何にもいらない
いつわりのない世界が
堂々と私を連れていってくれる

もっともっと遠くへ
ずっとずっと遠くへ

はかりしれない
夢の遠くへ飛んでゆきたい
ありのままのすべてを広げて









ありがとうを おしみなく あなたに

あしたへのそらがひかる

りんごのほっぺのように


がんばったあとの

とおくのそらは どこまでも

うつくしい うつくしい


ありきたりの まいにちを

りんりんと かえてゆく


がんばったぶんの

ときのかずだけ ゆうきは

うまれくる うまれくる


おりめのないおおぞらに

しずんでゆく ゆうひよ

みんな あしたのために


なきながら わらいながら いきてゆく

くれないのおもいに むねをそめてゆく


ありがとうを おしみなく

なんども ささえてくれた あなたに

たえまなく たまえまなく おくりたい


にしに しずむゆうひが いちにちをそめるように








.

春オタク

真冬の頃が
去年より長くなる分だけ
部屋の中には
春色の小物が増えるみたい

昨日出かけた
駅前の百均のストアーで
花びら色のマグを見つけた

寒さが厳しい町の中に
出かけるたびに
またひとつまたひとつ

増えていく春色コレクション
部屋の中には春色コレクション

春オタク
春オタクになって
今年も真冬を乗り越えたい

冬に生まれたのに
冬が苦手な私だけど
冬がやっぱり好きなんだ

冬の次は春だから
春を待つ唯一の季節だから

今を乗り越えられたら
眩しいことが待っているって

いつも通り過ぎた後で
そっとこの胸に教えてくれるから

今年も君らしく来てね
桜の全国ツアーの知らせも
みんなこの町で待っている

冬真っ只中の風も
冬の部屋の中の春オタクも
会いにゆける春を応援している






MYDEAR/新作紹介 掲載  (一部改正)
**どうもありがとうございました**






おふとんの夜

夜はいつも無口だけど
いつでも誰かのそばにいる

見えない闇ではなくて
さぐりきれない闇じゃなくて

そこにあったのは
つつんでくれる静かな夜

あなたはおふとんの中で
泣いたことがありますか

あなたはその時
その闇に何かを
たずねられたりしましたか

何にも言わずにそっと
そのままでいさせてくれる
おふとんの夜

どんなことがあっても
そこにいさせてくれる
おふとんの夜

お日さまの光だけが
あたたかいものを
運んでくれるとは限らない

はじめて知ったあの夜

光と闇のたったふたつのせかい
つつみあって明日になれる

なんて静かな夜
なんてそのままの夜
なんてあたたかい闇

ふくらみ

扉をあけたら
外は今日も冬だった

だけど少しずつ
春になってゆく町

花の木の蕾は
冷たい風の中で
静かにふくらんでいる

こころなしか
空の遠くも
まあるくふくらんでいる

まだ遠い春の風が
待ち遠しくてふくらんでいる

まださむい公園に来ていた
ふうせん屋さん

チューリップ色した
ふうせんもふくらんでいる

今は着ぶくれしているだけに
見えてしまう
ちびっこのさむがりやさん

だけど
そのむねの真ん中は
春の希望でふくらんでいる

町はふくらんでいる
みんなふくらんでいる

やわらくふくらんでくる
とうめいな
春の遠くを抱きしめたくて










.