砂山

冷たい闇の中を
ひたすら手探りで進んだ

真っすぐ行くこと
それだけをたよりに

自分だけの感覚
それだけの
真っすぐをたよりに

とつぜん目の前に
やわらかさがひろがって
あたたかさがひろがって

ひとつにつながった
子供の頃の記憶

なんどもなんども
海辺の砂をかけながら
二人して砂山をつくった日

そしてひんやりとした
砂山の両側から
トンネルを掘り合った日

ようやく繋がった砂山の
トンネルのまん中で
握手しながら笑いあった日

あれからその海辺には
なんどもなんども
夕日は沈んで

なんどもなんども
誰かがトンネルをつくり
握手しながら笑い合った

あの子どもの頃の記憶に
うっすらと重なる
大人の中の世界の薄闇たち

今ここにある
トンネルを抜けたい

信じるってなんだ

真っすぐっていう言葉は
まだ君の胸の中に生きているか

大人になるっていう気持ちが
あの頃の記憶と繋がって
僕たちは海辺の夕日になれるか

遠くの知らない誰かの真っすぐと
遠くの知らない僕の真っすぐが
繋がることを信じている

あの頃の記憶が
デジャヴになれる日
僕たちの大人の中の薄闇に
光は突き抜けてゆく

ただ真っすぐに続く
制限のない時間が
信じるという瞳に眩しくきらめき





MYDEAR 新作紹介欄 掲載  一部改変

***どうもありがとうございました***

魔法にかかりたい

魔法にかかりたい
欠けたものが
しずしずと満ちてゆくように

青い月の夜から
青い空の朝へと
しだいにあたりは満ちてゆく

新しい僕たちは今日も
新しい今日に満ちてゆくよ

君の眠りが覚めるのは
朝が来ただけじゃない気がする

いのちっていう
果てしなきめざめを巡る
青い魔法にかかり続けたい

今日も空は
どこまでも続いていたよ

生きているっていうことは
一から十まで
なぞかけの連続だから

悩み続けることも
なんだか
空に似ている気がするから

わからないことだらけ
それでいい
何にもだめなことじゃない

長いように思えた一日も
終わってみれば
一秒のように過ぎてゆく

いのちっていう魔法に
かかり続けたい
どこまでも続いている空の下

あっという間に
一日は過ぎてゆく
鼓動は魔法のように流れている







***MYDEAR 新作紹介欄 掲載(一部改変)***

 ***どうもありがとうございました。***

散歩

じっとしているのが
怖くなる午後は外に出たくなります

四角い部屋の外は
わずかな風が吹いて
木々が木漏れ日を揺らしていました

この世で一番小さな旅なのかも
ちょっとそこまで散歩するってことは

地図にもガイドブックにも
載っていない何でもないものが
おくびょうな人の心を
新しい日常に連れて行ってくれます

猫が散歩しています
犬が散歩しています
小鳥も空を散歩しています

豊かな公園の緑
入場券のいらない夢の入口
大空にまで
生きている声が弾けてゆきます

すれ違うすべてが
人生という旅のはしくれです

遠くもなく近すぎもないところに
こころを手招きしてくれます

散歩してきます
ちょっとそこまで旅してきます
見慣れた空はいつもより快晴でした


散歩してきます
ちょっとそこまで旅してきます
見慣れた空は いつも私を晴れに変えます










***MYDEAR 新作紹介欄掲載 (一部改変)***

  **どうもありがとうございました**



氷上の旅

君の名前の一文字が入った
異国の島をみつけたよ

遠い世界の氷の島
広げた一枚の世界地図の上

親指と子指を
精一杯広げても
まだまだ足りないくらい遠い

何者も踏み入ったことのない
氷の世界
奥深い心の未開の地

君に上陸してみたい

人は君のことを
冷たい人だというけれど
僕はそうは思わないんだ

長い間
誰かに決めつけられて
固まり続けた分厚い氷の幻想

思うようにしゃべれないことが
どうしてそんなに冷たいの

言葉足らずで
凍りついたままの君への誤解

三角形のうつむいたまま座る
かなしい氷の山

僕の周りにある
ありったけの光とぬくもりを
にのうでに溜めて旅に出たい

あらゆる氷をかき割りながら
白い船になって突き進む

君に上陸してみたい

そこにはきっと
ミドリナデシコみたいな
つつましやかな花が咲いてる

限られた季節の短い光の中

あの日見せた君の
一瞬のほほえみの花をもう一度





**MYDEAR / 新作紹介欄掲載(一部改変)**

***ありがとうございました***





あるものねだり

まるで寒い朝の小鳥のように

青いダウンでからだをふくらませて

自転車に乗って町を飛んでゆく


無意識にこいでゆく

通い慣れた家並みを今日も上手に

瞳を広げ朝の風を切ってゆく


鳥のような翼はないけれど

僕なりの翼で

日々の風景を飛んでゆくよ


お気に入りの自転車の車輪は

きょうもピカピカで

空を映しながら回り続けてくれる


目を 閉じて開けば

瞳だって翼になる

大きく広げて今日の空を渡るよ


ないものねだりより今は

あるものねだりをしようと思う


僕の中にある

まだ見つけられないものを

ほしいって探せば


にんげんにはない鳥の翼も

別のかたちで降りてくる


鳥にとっての空は

僕にとっての道だった


そして生きていくことが

すべての生き物にとって

大空のようだってことも見えてきた


答えようのない

迷い空を抜けたら

大切なものが背中に生えてくる


もう無理なんて二度としない

にんげんらしい鳥になりたい

今日も僕なりの翼で風を切ってゆく






 ***MYDEAR / 新作紹介欄 掲載***

 **どうもありがとうございました**

ひだまりポトス

言葉によろこんで

言葉になかされて
言葉を書いて読んで話して

今は誰かに言葉を聞いてほしい
だけど言えないことがある日

長く暮らしてきた
窓際のポトスは今日も
ずっとずっと静かに佇んでいる

君につぶやいてしまった
どこから聞いても
正真正銘の人の言葉で

そんな時に限って
どうして僕は
必要以上に人になってしまうのか

草花になれない言葉と
人になれない言葉
ふたつの言葉は違うけれど


やさしく揺れてくれるのは
単なる偶然って思えないのは何故かな

言葉に思えてくるのは
単なる気のせいと思えないのは何故かな

窓際にはひだまりができて

おだやかに笑っているように見える

君がのんきの神様を連れてきたって
言っているかのように
ひだまりにポトスの影が揺れていた

上手く生きていこうなんてしない

そんなことより
今すぐ大きなあくびを教えてあげる

もっとうまくノビのできる方法を
今すぐ知りたくないですか

肩の力を抜いて揺れてみようよ

せっかく今日も今日という日が

お互いにあるのだから
休日くらいのんきに眠ってみようよ

ささやきかけるひだまりのポトス




**MYDEAR/新作紹介欄 掲載**
*どうもありがとうございました*





***********************************************************************


はつはるのおよろこびをもうしあげます。

皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。
本年もよろしくお願い致します。




もうすぐ除夜の鐘が鳴る日


ほのかな石鹸の香り
せんたくものを広げる
せんたくものを畳んでいく

少しくたびれたシャツ
下ろしたての靴下
色とりどりのハンドタオル

畳んでいくたびに
浮んでは
透き通ってゆく種々の日々

今年も一年
いろいろあったね
いろいろ乗り越えてきたね

今年も一年
いろいろはなしたね
いろいろ泣いたこともあったね

今年ももうすぐ
あっという間にあとすこしだね

共に暮らした日々のみんなに
子供のようにお辞儀したくなる

積み重ねてきたものを抱きしめる
洗い立ての洗濯物のように
あしたのために大切にしまう

振り返って色んなことが思える今日
今なんにもいうことはないよ
もうすぐ除夜の鐘が鳴る日



*******************************************************************************



今年もあと少しとなりました。

本年の「POEM*ANDANTE」は「もうすぐ除夜の鐘が鳴る日」を持ちまして

最終とさせていただきます。


ブログで交流して下さったすべての皆様。ご訪問いただいた皆様。

心より御礼申し上げます。


皆様、どうぞ良いお年をおすごしください。

                       (eri)


流行歌だけにハマリたくない

楽しいことは楽しいと言える
子犬のように生きてみたい

嫌なことは嫌だといえる
子猫のように生きてみたい

尖ったプリズムなご時世は
カラフル且つ
切なきアニマルランド

光のあたる場所に人は流れてゆく

耳ざわりのよい流行歌のような
鮮やかな鳥の羽音が響く
インスタ映えな日々に群れる

騒がれるだけで行列ができる
みんなに乗り遅れたくない
シロクロパンダな孤独

好きでもないスウィーツに
手を伸ばしてあざとく笑う
甘い偽物カメレオンなマヤカシ

揺れ動く日々の孤独
今一番の太陽は何処にいる
置き去りにされたくないだけの追走

生きてゆく命のプレイス

内にも外にも鼓動はリズムを刻む

尻尾をふりながら
髭を揺らしながら踊る人の群れ
てっぺんの風に手を伸ばす空の下

流行歌だけにハマりたくない
ありふれた歌にも耳を開く人生
僕はとびきり平凡な生き物になりたい










 *** MYDEAR / 新作紹介欄掲載 *** 

  *どうもありがとうございました*





無地

大木に一枚の布が
翻っている
何度も何度も風に
かたちをくねらせながら

そり返るたびに
少しだけ光って
もとに戻ろうとするたび
少しだけ影になって

誰にもわからない
あしたの続きなんて
戻されるたびに泣いて
そり返るたびに泣いて

風が止んだら
くたくたに湿った
ましかくでたいらな場所にも
まあるい光の雫は降ってくる

時の日なたになでられたら
ざらついた手触りは消えて
ほどこされる光の刺繍

いつかきっと
ここから飛んでゆける
濡れたことなど忘れるくらい

しっとりとしっとりと
愛・あざやかに交差して
はためく風と光の布になってゆく







MYDEAR / 新作紹介欄 掲載(一部改変)

*どうもありがとうございました*

かわい草

かわいそうなんて言わないでください

どんなに正直にがんばっても
むくわれない香りを

どんなに正直になやんでも
かわらない姿を

この町の入り組んだ
うすよごれた路地裏で
今夜も風にゆられて生きています

この町の立て込んだ
こわれそうな塀の下
今日は雨にうたれて生きています

だけど
かわいそうなんて言わないでください

この町の建物も人もみんな
日々の隅っこを見捨てたりしないから

擦れた水路に水が流れています

何かの泣けないものの代わりに
同情ではなく
自分のことのように
泣くことができるように

そんな気高い情けのような日々が
この町にはずっとあり続けています

だから
かわいそうなんて言わないでください

わたしはこの町の
正真正銘の雑草なのです

名もない
この町の雑草であり続けたいのです











**MYDEAR / 新作紹介欄 掲載 (一部改変)**

    どうもありがとうございました。



夜釣り


誰にでもある日々のつぶやき

どうしようもない
大小のあぶくは
水の何処かに捨てられてゆく

受け止めるものの角度が
ほんの少し違うだけで

それぞれの不幸にも
幸せにもなりうる自らの海

息を止めては潜水し
顔を上げることを繰り返す

とどかない夜の月を
ぼんやりと
見つめることを繰り返す

泣きそうで泣かない

真昼のうす青い心のひれで

しょっぱい

この街の水を泳いでいる

このまま海水の世界で

生きてゆくのもどうだろうな

懐かしい淡水の世界に
背びれをゆだねてもいいかな

半分にんげんで
半分魚のように生きてゆく

すべてを許すのは許しがたく
すべてを許さないのも許しがたく

浮遊する
この街の矛盾の果て
とめどなく流れてくる困惑の闇

今夜騙されたい
騙されたい
嘘ばかりだったあの人に騙されたい

僕と一緒に泳いだら
絶対不幸になるって騙してほしい

月が落ちてきそうなくらい
零れそうな真夜中の色

彷徨う波のはざまから
あっさり釣りあげられて水飛沫
うす青いひれにあの人が透けている








***MYDEAR 新作紹介欄 掲載***
  ありがとうございました


人生図鑑


生き物になりたいって
本気で思った青白い深夜

ポタリポタリと落ちてくる
涙の音を拾いながら

うつむいたままで
深呼吸した弱虫に月あかり

名もない生き物が
まだまだこの世には

たくさんあるって
ささやいてくれる今夜の月

世界中の図書館を探しても
見つけられない
人生図鑑が君の中にあるんだ

さて今夜は僕と君で
時のゆるす限りどこまでも
ページをめくっていこうか

あるページでは
ことごとく寡黙な草木だった君

あるページでは
意地っ張りの負け犬だった君

あるページでは
罠にかかった小鳥だった君

そして今の君は
名もない一匹の弱虫だと言う

湿気た部屋の胸の書棚から
手元にある一冊を開いてみて

目を閉じれば浮かんでくる
真昼の夢の陽ざしへと差し出して

君なら君に言える

草木なっても犬になっても
鳥になっても虫けらになっても

僕は常に
生き物として生きてゆきたいって

今は名もない一匹の弱虫だけど
いつか虹色の玉虫のように

まっすぐに背中を光らせ
陽ざしの中を飛んでゆきたい

僕というの中の
まだまだ薄っぺらい人生図鑑

色んな僕を記憶に残しながら
生きてゆくこれからも

動かない置物にはなりたくない
生き物になりたい
人生って相変わらず難しい

過去という時間が
動かない写真になっても
その中でも息をしていたいんだ

今は名もない一匹の虫けらだけど
いつかしあわせな弱虫になりたい
僕は僕の人生図鑑の中で



MYDEAR 新作紹介欄 掲載 / 一部改変

*** どうもありがとうございました ***

くぼみ



わたしは
小さなくぼみでしかありません

そんなことを呟く君は
まだ気づいていないのだろうか

かわいた砂けむり立つ道に
降り続けた雨があがって

まだどこにも
行きたくない雨を

受け止めてできた
小さな水のほとりのこと

雨上がりの光の空を
流れるまわたの雲を

誰かのために
そのままに映し続ける
小さな水のほとりのこと

青葉が耐えきれずこぼした
ひとしずくを受け止めて
描いた淡い水の輪のかたち

雨に怯え続けた小鳥の孤独
舞い降りた光のまぎわ
同じ姿を目の前に映し出し

安堵の水鏡をあたえてあげた
小さな水のほとりのこと

それはいったい誰ですか

それはえくぼのような
やわらかな君のほほえみ
雨あがりの小さな道のくぼみ









***  MYDEAR/新作紹介欄 掲載  一部改変  ***

        どうもありがとうございました



幸福堂

新規開店の扉の前に
何やら長い行列ができていた

何のお店かわからないまま
行列につられて
次から次へと人は続いてゆく

誰かがぽつりと言った
このお店には評判の
幸福になれるグッズがあるの

誰かがぽつりと言った
このお店には評判の
幸福になれるサービスがあるの

何もわからないまま
次々と人は並ぶ
どこまでもどこまでもつられて

やがて木製の小さな扉が開いた
人々は次々と
扉の向こうに吸い込まれてゆく

大きな歓声が次々とあがる
開かれた扉の向こうから
聞こえてくる

扉の向こうには
何にも売られてなかった

ただどこまでも広がる
生まれたての緑が続くだけ
ここちよい土の香りが染みてくる

よく晴れたやわらかな
太陽のまるい陽ざしが
人々の見えない孤独を包んでゆく

ただみんなは立ち尽くして
飛行機雲の空を見上げた

ただみんなは座って
生まれたての緑を見渡した

ただみんなは寝ころんで
とがめられない昼寝を楽しんだ

そこには何にもなかった
何にも売られてなった

ただ幸福という言葉に魅かれた
何処にでもいる人たちが
みずからつくりあげていた

しがらみのない自由と
焼きたての
パンの香りに似た陽ざしの中に

わが身をゆだねるささやかな幸福
次々と次々と人々は微笑んだ

ただ見渡す限りのセルフの光
何にも売られていなかった
開かれた扉の向こう

幸福堂はやってくる
知らないうちにやってくる
あなたの街にもやってくる











*** MYDEAR 新作紹介掲載 /一部改変 ***

    *どうもありがとうございました*





誰かの春になりたい


両手を双眼鏡にして
ふざけてのぞき込んだ春は
かなしいくらいどこまでも春らしい春

平凡という言葉が
痛いくらい熱く
冷たい胸に染み込んでくる

小さく泥跳ねしたままのシューズで
いつもの道を歩きだせば
そこはかとなく透明な雨の水たまり

雲はあいかわらず動いている
風はほんの少しまだ冷たくて

微かに香る道草の匂いだけが
見慣れた道を過ぎてゆく

双眼鏡なんかで見なくても春
眼鏡をはずしても春
あたりまえのようにいつのまにか
暮らしの中に降りてくる春

ぼやけて滲んでくるものが涙でも
すぐに水の輪の光にかわる
春の平凡はこの上なくあたたかい

平凡な雲でも水たまりでも
背の低い道草でもいい
今かなしいくらい誰かの春になりたい











 ** MYDEAR/ 新作紹介欄 掲載 **

  ⁂ どうもありがとうございました ⁂




春の水になって

果てしないゆきみち
寄り添いながら歩く猫たちは

ときどきブルルと
片方の足を上げながら
それでも前へ前へと歩いてゆく

久しぶりの晴れの日だから
何よりもあたたかくて

どこまでも真白なこの道を
太陽に向かって歩き続けていた

猫たちがそこにつけた
おそろいの足跡は
まばゆい春へのスタンプラリー

やがて透明になって
季節の流れにさらさら溶けてゆく

ここにある真白な風景も
やがて春の水になって大地を潤す

知っているのか知らないのか
いつのまにか猫たちは
ゆきみちをすり抜けて

陽の当たる軒先を見つけて
大きなあくびをしながら
まどろんでいる

凍てつきそうな真冬の鬱さえも
たおやかにつつみこんで

やがてかじかんだくちびるへと
ひらひらと解き放たれる
なないろひなたの微笑み

あまあまと流れ出した
春の歌声に
こころはぬるみだしてゆく

さみしい目をした君にも
どうか流れてほしい
むねのほとり潤す春の水になって













** MY DEAR 新作紹介欄 掲載  一部改変 **

     ⁂ ありがとうございました ⁂



平熱

 

人は小脇にいつも
何かを抱えて暮らしている

普段通りの日は
なんにも気づかないけれど

頑張りすぎて少し
疲れて寒かったりする日は

小脇に抱えていたものを
取り出しみつめて驚いたりして

君と暮らしてゆくことは
何にもない無機質な平和に
ひとはだの温みを授けてもらえること

下がりすぎることもなく
上がりすぎることもなく
ただどこまでも平熱な日々

特別じゃなくていい
ただ今を繰り返してゆけること
それが僕にとっての特別でもあるから

どこにでもありそうな
ベタなしあわせを
いつか僕たちも沢山感じられるように

確かめるために小脇に抱えたものを
壊さないように
落とさないように大切にするよ









*** MYDEAR/新作紹介欄 掲載  ***

         ありがとうございました



おとなりのつぼみさん

おとなりのつぼみさん

おとなりのつぼみさんは
もうさくんですか

あなたはいつさくんですか

あなたがさきたいなら
わたしはそのあとでいいですよ

いいえ
おとなりのつぼみさんから

いいえ
あなたのほうからどうぞ

おとなりどうしで
そわそわしている

おとなりどうしで
ゆずりあっている

おおきな
さくらのきのえだに
まんいんのつぼみたち

いいじゃないか
いいじゃないか

そんなじゅんばん
どうでもいいじゃないか

そらのつぼみが
おおきくそらをひらいた

まぶしいかぜがふきはじめる

いいじゃないか
いいじゃないか
みんないっしょでいいじゃないか

だってだって
もうすぐもうすぐ
みんなのみんなのはるだもの









ほどけて



空は昨年の青にほどけて
またあたらしい青にからまる

鳥は昨年の風にほどけて
またあたらしい風にからまる

私は何にほどけたくて
いったいここまでやってきた

気がつけば
この町中に
ほどけてからまっていた

遠くで光っていた
透明なにおいのする川風よ

やがて空にほどけて
もっと遠くで海になってゆく

あした待ってるから
あした私待っているから

七色の願いの紐が
ほどけて
へこんだ空を元にもどすように

透明なにおいの風が
こころじゅうに吹き込まれて

どこにでもいる私もあなたも
背中ごしに涙をほどくこと

はじまった駅の音
道路の音
木々の音
雲の音

みんな何かにほどけてゆく

あしたの朝
何にもなかったかのように
いそいそと顔を洗う

ただ
あたらしくあたらしく
ほどけた素顔を朝のかがみに映す







********************************************************



初春のお喜びを申し上げます

本年もどうぞよろしくお願い致します

みなさまにとって、よき一年でありますように



似たもの同士

憧れは鐘に似ている
夕暮れの冬の窓ガラスに
そっと息を吹きかけてなぞった

指さきは文字を描く
憧れと鐘という文字は似たもの同士

憧れはいつか誰かの手で
打ち鳴らされたい
夢のような存在ではなくて
叶えられたひとつのものとして

窓を開ければ広がる風景
鳴らない寺院の鐘

寂しそうな鐘を
冬の風が揺らしたがっている

鳴らない鐘は
誰かに鳴らされることが憧れ
溢れる想いをこの空に響かせたい

憧れと鐘は
もうすぐ夢を叶えられるだろう

もうすぐおおみそか
もうすぐ似たもの同士の夢を持つ
人々の靴音も路上に鳴り響きだす

もうすぐおおみそか
空に鳴り響くあまたの鐘の音

みんな似たもの同士
日々の胸に鳴り響く
やがて訪れる新しきものへの憧れ






***********************************************************


 

  今年も一年間ありがとうございました

2018年度のブログは、詩「似たもの同士」を持ちまして、最終とさせていただくことになりました。

交流をもってくださった皆様、そして、訪れて下さったすべての皆様に心より御礼申し上げます。


どうぞ良いお年をお迎えください