誰かの春になりたい


両手を双眼鏡にして
ふざけてのぞき込んだ春は
かなしいくらいどこまでも春らしい春

平凡という言葉が
痛いくらい熱く
冷たい胸に染み込んでくる

小さく泥跳ねしたままのシューズで
いつもの道を歩きだせば
そこはかとなく透明な雨の水たまり

雲はあいかわらず動いている
風はほんの少しまだ冷たくて

微かに香る道草の匂いだけが
見慣れた道を過ぎてゆく

双眼鏡なんかで見なくても春
眼鏡をはずしても春
あたりまえのようにいつのまにか
暮らしの中に降りてくる春

ぼやけて滲んでくるものが涙でも
すぐに水の輪の光にかわる
春の平凡はこの上なくあたたかい

平凡な雲でも水たまりでも
背の低い道草でもいい
今かなしいくらい誰かの春になりたい











 ** MYDEAR/ 新作紹介欄 掲載 **

  ⁂ どうもありがとうございました ⁂




この記事へのコメント

詩 誠
2019年05月06日 19:07

>悲しいくらい誰かの春になりたい<

相手に対して深く暖かく涙ぐましいほど
思いやる気持ちが伝わってきました。
春の匂いは草花が芽生え萌え滾る香りだと
思います
この萌え出る香りを柔らかな春風に
乗せて、誰かさんに送り届ける事が
出来れば、深い思いやりの気持ちが
きっと伝わる事でしょう。
失礼しました。
2019年05月06日 23:38
詩 誠 さんへ

もしかして私は、誰の役にも何の役にも立っていないのでは?・・・何かの失敗や壁にぶつかること等がきっかけで、意味のない不安にみまわれることがあります。そんな時、春の景色を目にすると、それだけで心が癒されます。そこにいるだけで誰かの気持ちを温められる春のようになれたらどんなにいいでしょう・・・。

春のようなあたたかいコメントをありがとうございました。

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