両替え


数だけ増えた一枚の重みを
ポケットに忍ばせて
夕暮れの商店街を歩いてゆく

踏みし出すたびに
微かな音をたてるポケットに
そっと手をあてて歩いてゆく

どこかで零れないように
どこかで失わないように
気にしながら今日を歩いてゆく

じゃらりとカタチを変えても
ぜんぶ合わせれば同じ呼び名
もう一人の自分のようなカタチ

大きく広げた一枚のカタチだけで
そのままに生きてゆけたなら
どんなにいいだろう

数だけ増えた個々の僕のスガタ
誰かにその一枚を渡したまま
返ってこない日々もあるけど

元のスガタに戻れるまで
時間の要する日々もあるけど

代わりに手渡された別の何かが
うつむいた時のスガタに
ひかりを与えてくれることもある

何だか喉が乾いてきて
やけに派手な自販機が気になって

ポケットの中の一枚をほおりこんだ

新発売の清涼飲料水
ためらいもなく注ぎ込む
今日の夕暮れの空を自動的に仰ぎながら


一枚減ったポケットの中身
引き換えにもらった満たされた時
失われたようで失われていない合計

夕暮れの商店街
一枚と引き換えに渡されてゆくもの


古びたゲーセンから
聞こえてくるコインの音

閉店まぎわの店先で
品定めしている人の群れ

くたびれたスーツ
陳列をふり返りながら
立ち止まりながら歩く後ろスガタ

私本来という大きな一枚を

その時々に同じだけの
小さな一枚に変えながら

むせぶような町の匂い
見慣れた日々を往復してゆく

打算的な夕暮れに

涙する日々もあるけれど

小銭のような私の一部にだって

満たされる夕暮れもあるから
なんとか生きてゆける気がしてる


明日 晴れたらいいな
目の前に映る太陽の半分

夕暮れと引き換えに
僕たちに渡されるさりげない明日
やわらかな合計に照らされる今日







(MY DEAR/新作紹介欄 掲載)(一部改変)
   *どうもありがとうございました*

この記事へのコメント

2018年10月29日 20:00
何かとかえられていく、
「スガタ」や「カタチ」のなかにも
自分でかえていく、
「スガタ」や「カタチ」があって、
それはきっと、
「さりげない明日」につながっていくのでしょうね。

ごめんなさい。
自分勝手ですが、
なんとなくそんな思いにかられました。
2018年10月29日 21:37
ひらひらと さんへ

そうですよね。何かとかえられてゆくものや、自分でかえていくものが、確かに存在しますよね。自身の色々な一部分。どれもこれも自身の生身の一部分であることには変わりなく・・・

生きていると色々あるけれど、さりげない明日を糧にしながら、暮らしてゆけたらいいですね。

コメントをありがとうございました。

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