君に光と花びらを

生きるって辛いねって
桜だってきっと思う日もある

短い春の中で
満開の桜が咲いている

けれども散りゆく桜は
泣いているわけじゃないのか

木漏れ日の間を広げるように
肩落とす人の今日の失敗にも
光と花びらを届けている

今をせいいっぱい生きよう
どんな風に吹かれても
どんな雨に打たれても

いのちの蕾広げて
生まれてきた僕たちの奇跡
いつしか小鳥の歌を連れてくる

長い坂道に舞い降りる花びら
うす桃色の絨毯になる

上りゆく人の一歩一歩に
どこまでも寄り添ってくれる

今しかできない時を生きよう
なんども口ずさむように
そっと肩に舞い降りる花びら




桜の予感


通りにある大きな桜の木

揺れる木々の枝


ずっと空白だった

細い枝と枝の間に

初々しい蕾のかたちが帰ってくる


やがてその空白は

あふれくる花の色に満たされて

空さえ青いはざまになってゆく


僕たちの折れそうな心の枝にも

どうか新しい蕾を


僕たちの空白の思いたちにも

どうか眩い時の花びらを


まだ早い桜の木々に降り立つ

小鳥の背中

あたたかな春の光を乗せてくる


まだ早い通りを散歩する

せわしげな子犬のあしどり


立ち止まってクンクンさせたのは

ところ狭しとふくらみを放つ

つぶらな蕾のぬくもりか


広がる桜の予感


人も小鳥も子犬も今日も

まだ淡い淡い陽ざしの中


つつまれる桜の予感


おだやかなぬくもり

まだ花には早い通り

揺れる木々の枝


生きとし生けるものに

すきとおる春への思い

手招きさせるのは薄絹色の風






(一部改編)




















白い町

白い雪が溶けて
白い花が咲いたら
白いセーターを着ていた君も
白いシャツに着替えるだろう

だけどこの町の雪が溶けて
どんな山の色が見えても
どんな道の草が揺れても

このまま消えてしまわない
何にも汚れの知らない白が
僕の中にもあるってことを
どうか信じてほしい

君を大切にしたいと
思えば思うほど泣きたくなる
どうしようもない甘い痛みが
体じゅうを走ってゆく

君と泣き笑いすごした
真冬の時を思うたび
どうしようもない愛おしさが
隠しきれない白になる

君が大好きなこの町の
風さえ息を飲む
静かな静かな白い朝

誰かが歩いていった
足あとだけが続いている

君を大切したいと
思えば思うたびに浮かんでくる

凍てつきながらも温め合った
僕たちの白い日々
僕たちの白い町

やがて長い長い日々も
静かに通り過ぎて
ひとつの季節にかわってゆく

まっさらな光あふれて
白い花
白いシャツ

目を細めたくなるような
白いぬくもりに包まれる
僕たちの白い町





MY DEAR/ 新作紹介 掲載
**どうもありがとうございました**
.

少しずつ春

そっと肩にかかったのは
午後の光のベール
それは淡い春の兆し

まだ寒い時の色を
ほんのり包んでくれる

小さな春のぬくもり
教えてくれる

歩き出せば見えてくる
水たまりの中の空一面

揺れていた
ほのかな春の光が

もうすぐ遠くに見える
白い山肌も微笑む

そしてまっさらな
水の音が生まれてくる

やがてなだらかに
おだやかに近づいて
この町にも聞こえてくる

小さな春のせせらぎ
教えてくれる

見渡せば少しずつ春
耳を澄ませば少しずつ春

光の春から音の春
今は少しずつ春
待ちわびている本当の春







.

がらんどうの空に

がらんどうの空に
月だけが微かに輝いている

真冬の風がせわしそうに
一本線を街の夜空に残してゆく

子供の頃
あんなにあった星も
霞んでどこかに行ってしまった

埋め尽くしたいものが
街の夜空じゅうにある

それは真昼と真夜中の時間を
かき集めてもまだ足りないもの

時に僕たちの胸の中の宇宙にも
どこか淋しげに響いてくる

夜空のずっとずっと向こうと
僕たちの胸の奥の宇宙

そっと重なり合えるラインに
その答えは見えてくる
そんな気がしてならないんだ

がらんどうの空の
夜の真下に煌めく
そっけないイミテーションな宇宙

本当の月を今にも支配しそうな
昼のような夜が渦を巻いている

思えば速攻直結の
人工の星の中でつながっている
顔も声もいらない交信に夢中の今

がらんどうの空に
失われそうになる人の宇宙が
乾いたこの夜空に甦ること

ほんの少しでも取り戻せること
胸の奥で願い続けている

僕たちは忘れようとしているのか

顔をあげて
遠くの誰かを想うこと

何かを待ちわびて
夜空を見上げる
イマジネーションの宇宙







MYDEAR/ 新作紹介 掲載
**どうもありがとうございました**







さよならなんてしたくない

うぶごえをあげたいのちが
ひらいてにぎりしめる
小さなこのよのひかり

忘れてしまうほど強い一瞬
それは通じる胸の奥底に
きっと刻まれてゆくんだ

生まれて生きていく途中で
通り過ぎなくてはならない
涙と戸惑いの日々

あの時あなたが見せてくれた
絶え間ないやさしさに
私はもういちど
生きてゆく勇気をもらった

うぶごえをあげたいのちに
誰しもかならず譲り受ける
やさしさという
まっさらな心の希望

胸に深く手をあて続けたなら
やがて感じられる

あしたに続きたいと切に願う
いのちの居場所

どんなかなしいことがあっても
ここから動きたくはない

ちぎれるほど誰かに
手をふらされても
さよならなんてしたくない

愛という名のありか
やさしさだけには
さよならなんてしたくない






MY DEAR/ 新作紹介 掲載
**どうもありがとうございました**


.

濡れないように

とつぜんの雨に濡れる
街角のコンビニ

乾く暇もない髪のまま
急いで駆け込んでゆく人

店先に貼られた
レイングッズのポップ

「カサ あります」

とつぜんの雨は
そのままに降り続いている

何にもしなくちゃ
ただ濡れ続けるばかり

止んでほしいと願っても
すぐに雨はやまない
そのままに降り続いている

特別なものでなくていい
その場しのぎでもいい

明るい空を望んでいるなら
何かを始めなくちゃ
ただ濡れ続けるばかり

教えてくれるように
次のどこかへ
通り過ぎて行った人

悩み多き心のように
雨雲から涙雨が降り続ける

もう少し風が吹けば
飛んでしまいそうな傘に
強く守られながら

濡れないように
濡れないように
通り過ぎて行った人
















スタートライン

太陽は曇り空でも上空で輝いている
そして今年も初めての空に
光の一筆を振る舞い始めた

すっくりと地上に立つ僕たち
遠い遠い子供の頃
舗装されていなかった土の頃は
友達と一本の棒を拾って
スタートラインを引いたけれど

今じゃアスファルト
そこにもう一度
同じラインを引くことはできない

でも僕たちは覚えているよ
ここから走り出したことを
忘れたくても忘れられない
ひとつの始まりだったことを

幻のように消えそうな夢も
どうしても近づけない夢も
限りなくそばにいる夢も
みんな僕たちを照らす
聖なるシグナルライト

雨の日も曇り空の日も
今日も生きている尊い証のように
僕たちの日々の真上で瞬いている

どんなの道の上にいるのかよりも
どんな道を歩いてきたのかが
今はなんだかとても愛おしい

走り出せる
走り続ける
ここからまた
すべては明日へのスタートライン





MYDEAR / 新作紹介 掲載 (一部改編)

***どうもありがとうございました***







本のお知らせです。  詩誌『回生』第て号(通巻36号)

詩誌『回生』第て号(通巻36号)発行されています。


          最新号 て号(通巻36号)表紙(画:明才)




画像


詩誌『回生』が関西と関東で入手可能となったそうです。


東京では、神保町の小宮山書店及び日本橋のアトリエハナコに、京都では恵文社一乗寺店に少部数ですが、置かせていただいているとのことです。



 回生を置いている場所(2015年1月16日現在

  ・恵文社一乗寺店(京都)入手可能
  ・小宮山書店(東京神保町)入手可能
  ・アトリエハナコ(東京日本橋)入手可能
  ・パソコンパーツショップ「ガレージコム」(群馬県前橋市富士見村)入手可能
  ・セーブオン時沢店(群馬県前橋市富士見村)入手可能
  ・喫茶ホルン入手可能
  ・書本&cafe magellan(仙台市春日町7−34)入手可能
  ・宮城県立図書館(地域情報室) 入手可能
  ・仙台市民図書館入手可能
  ・cafe haven't we met入手可能
  ・せんだいメディアテーク
      クレプスキュールカフェ脇フリーペーパーコーナー(配布依頼終了、後日入手可能)
  ・仙台文学館入手可能
  ・宮城県美術館
  ・Book Cafe 火星の庭入手可能
  ・cafe Mozart入手可能
  ・cafe Mozart atelier入手可能
  ・蔵人(くろうど)(村田町)入手可能
  ・大河原町図書館 入手可能

  ※ 各場所には、15部程度しか置いておりませんので、すでに無くなっている場合やまだフリーペーパーコーナーに置いていない場合がありますのでご注意ください。


  ☆ PDF版はホームページからダウンロード可能だそうです。


☆詩誌『回生』 中村正秋 & 小熊昭広 ホームページより引用させていただきました。            

つつむ

にぎりしめた両手を
そっとひらいたら
窓際の光がその中にとどきました

大きくひらいた両手を
ぎゅっとにぎりしめたら
窓際の光はこぶしをつつみました

紙のようで紙でないものが
この暮らしの中にはあります

布地のようで布地でないものが
この暮らしの中にはあります

見えない何かがいつも
私たちをつつんでいるようです

目隠しされたような明日に
もうあきらめかけた時
つつまれて泣いてしまうのは

上等な紙でもなく布地でもなく
どこにでもある窓辺の
ひだまりのような人のぬくもり

これからも私たちは
つつみつつまれながら
時を重ねてゆくのでしょう

やがて日々の両手が
誰かの様々な涙の色を
つつんでもにじませず

そっとかくしてあげられる
そんなやわらかで
淡い光の厚み

そのものとなれる日が
いつかきっときてほしい
いつかきっときてほしい

そんな願いにつつまれながら
生きてゆければ
生きてゆければ









一年間、ありがとうございました。




今年も、たいへんお世話になりました。

心より御礼申し上げます。


本年度の更新は、詩 「みんな、みんな」を持ちまして、

最終とさせていただくことになりました。



一年間、誠にありがとうございました。


皆様、どうぞよいお年を・・・。







.

みんな、みんな

今年最後の
番組のオンエアーです

かわるがわる
流れてくるDJの声

少し渋滞ぎみの道路
師走の風に包まれている

赤信号が変わるのを
待ってるドライバー
振りかえれば続いていた

今年何度も通った道
あと少しで来年になっても
僕は同じように通うだろう

そばにいても遠くにいても
大切なものはいつも
同じ場所にあること
教えてくれた人よありがとう

師走の町が来年の町に
変わろうとしている

だけどすべてが
変わってしまうわけじゃない

大切なものはいつも
同じ場所で浮かんでくる

今ここには見えないけれど
通いなれた道の中に
それぞれの一年の足跡がある

交差点を曲がる人も
真っ直ぐ行く人も
Uターンして行く人も

一つの年を過ぎてきた
そして次の年に向かって行く

もうすぐ道の上の空に
鳴り響いてくる
静かな静かな鐘の音は

そばにいてくれる人も
遠くに離れてしまった人も
みんなみんな一つにしてくれる

目をとじれば浮かんでくる
大切なものはいつも
みんなみんな同じ場所にあるから




















水を折る

もうすぐ雨が来ると知っているのに
晴れたそぶりの空は続く

振り返りざまに風が吹いた
誰かの長い髪の音が胸に響く

傘は最初から持って来なかった
もう無理はしたくなかった

やっと空っぽになった
擦れたかばんの中にこれ以上
何も押し込めたくなかった

ロータリーの真ん中
吹き上げる噴水の向こう側

巡廻バスのドアが閉まる
駆け込んでくる人を待ちきれず
決められたままに発車する

降りしきる噴水の雨に
ほろほろと本当の雨がこぼれた

噴水と小雨の皮膜の向こうで
無造作にすれ違う人の群れ

いつのまにか本当の雨は
噴水の雨を覆い尽くす

このまま泣いてしまっても
何が雨か涙かなんて
濡れてしまえばみんな同じ

傘なんて最初から差したくなかった
頬を打つ雨の隙間を
引き裂いてこぼれてくる涙

このまま濡れてしまえば
何が雨か涙かなんて
きっと誰もわかりはしない

自在に往来する雨の色
夢中でつかんだ雫の先端は
きっと耐え切れず割れてしまう

鏡のような水面に
容赦なく落ちてくる雨
幾度となく
ひび割れそうにになっても
壊れはしない水面の影

髪の芯から足の芯まで濡れても
傘は差したくなかった

髪に肩に突き刺さる雨
折ってしまいたくても
折ることのできない水のかたち

きっと濡れてしまえばみんな同じ
傘なんて傘なんて
傘なんて差したくなかった











MYDEAR/ 新作紹介 掲載

**どうもありがとうございました**

冬の中に

さっきいれた珈琲が
もう冷めてしまうくらい
窓の外はすっかり冬
見渡す限りに冬のまち

とぎれないひとの波
それぞれの姿が
曇り空の下に溢れている

どれだけ寒くなっても
動くひとのぬくもりは
コートの内に外にある

白い息
ふいに触れあう
まるみをおびた肩先に

どんなに寒い冬がきても
ひととしてのぬくもりが
ずっとそばにあれば

人は皆
どんな暖炉よりも
あたたかい
冬の中にいられる

誰よりも凍てつく心を
知った時代の君が
きっと今日も誰かの
冬の中にたどりついている

そして誰よりも
本当の優しさに動いている

心無い吹雪のような
冷たい仕打ちを超えて
ゆるぎない強さをつかんだ君

誰かの為に暖炉になる
誰かの冬の中で
誰かの孤独を包んでいる





みずいろバス

さっき乗り遅れてしまった
みずいろバスの背中を
見送ることしかできなかったように

通り過ぎてゆく言葉をあなたは
ただ黙って見送っていた

そして腕に巻かれている
金色の陽ざしの時計を
ゆっくりと顔に近づけながら

みずいろバスの
空白だらけの時刻表を
何度も何度も確かめていた

すべての言葉は
訪れる風の流れのままに

淡々と停車を繰り返しながら
目の前に近づいては通り過ぎてゆく

手にしたい時刻は
ただ立ち尽くすだけでは
永遠の空白へと通り過ぎてしまう

後ろ向きな
日々の流れを変えたいから

海からの空からの時刻をゆく
みずいろの風に乗りたい

ただ立ち尽くすのではなく
この目で触れながら
このゆびで触れながら

今ここにある
こころの全部で触れながら
本当の時のありかを確かめたい

自分を自分らしく
変えてくれる時間の中へ
連れて行ってくれる言葉を待っている

空からのクラクション
海からのクラクション
どうか波打つ鼓動に聞かせてほしい









☆☆ MYDEAR / 新作紹介 掲載 ☆☆

***どうもありがとうございました***











あたたかいおまもり



朝のテーブルの上
おばあちゃんが私にくれた
うすももいろのハンカチが

東がわのまどから
さんさんと降ってくる
秋のひざしでふくらんでゆく

そっと手にすると
それはとてもあたたかくて
ギュッとにぎりしめたくなる

ずっと暮らしてきた家族から
もらいうけたものは
みんな思い出で染まっている

どこに行っても手にできない
一生分の思い出一色で
人の心の奥も染めてくれる

おばあちゃんとつないで歩いた
土手の上の青空の光の声
金色すすきを照らす光のにおい

歩いて歩いて休んで歩いて
歩いて休んでまた歩く

まだ歩けるかい
しんどい時は待っててあげる

うすももいろのハンカチ
今日のポケットに忍ばせれば
私だけのあたたかいおまもり

















大切な贈り物

君がこれまで生きてくれた
お祝いをするために
僕ができることはなんだろう

いつも一緒にありがとう
そんな言葉が生まれてくる
ハートのバースデイ

泣いたり笑ったりの
日々の繰り返し

どんな時も
ただそばにいられること

それがいつも一番
僕たちにとって大切だった

窓辺の花よ
何気ない町の景色よ

見渡す空の下に
架けられた橋を渡れば
おだやかに見えてくる水辺よ

ここで暮らしてゆくと
決めた新しい町の
どんなお店を探しても買えない

どこか遠くの朝のお皿に
そっとのせられる
淡いパンの香りのような

それを包みこむ
そこはかとなくやわらかい
てのひらのぬくみのような

そんなてづくりのしあわせを
君に手渡したいから

特別な日も
そうでない日もずっと一緒
ここに暮らし続けてゆきたい

君と笑うことが大切なこと
君といることが大切なこと

それを感じることを
君に忘れさせるくらいの
何気ないおきまりの日々を

特別な日も
そうでない日も君のために
つくり続けることが大切な贈り物

たったひとつのふたつ

生きるってかなしいね
生きるってさびしいね
生きるってつらいことばかり
生きるってくやしいことばかり

こんな毎日が続いても
僕は誰かに
勝ちたいとも思わない

人と人が争い合うことに
見下しあざ笑うことに
どんな意味があるのだろう

だから僕はせめて
僕のままでいたいんだ

今日を生き抜いた僕が
明日も生き抜くことができるように
おぼろげでも向かい合いたい

こんなに狭い世界と短い時間の中で
誰が一番で誰が最後なんて
決めたって何にもなりはしない

どれだけ僕は僕らしく
生きていられたかの方が大切なんだ

生まれてきた時に授かった
からだとこころ
そして授かったもうひとつのもの

それはたったひとつのふたつ

からだだけではみえないんだ
こころだけではみえないんだ

たったひとつのふたつが
かさなってみえてくる
自身というたったひとつの姿

どんなに便利な生活の中でも
どんなにお金を払っても
欲に溺れて忘れてしまえば
手にすることができないものがある

それはもって生まれてきた
人に生まれるという優しさ

他人の嘘と狡さに
負かされそうな時に思い出してほしい

たったひとつのふたつにある
生まれた頃のままにある
人に生きる君だけの優しさを

埃をかぶって汚れてしまっても
自身のどこかにある
生まれた頃のままの優しさを

力任せの言葉も
言い負かそうとする言葉も
いつかは真実の奥に砕け散る

僕たちは自分らしく生きる勇気を
忘れたくないから
たったひとつのふたつを忘れたくない

だから今日も泣くだけ泣くよ
そして笑えるだけ笑うよ
たったひとつのふたつの姿のまま

かなしいのも僕さ
さびしいのも僕さ
つらいのも僕さ
くやしいのも僕さ

生きているのは僕さ
何一つ嘘の狡さの欠片もない
正真正銘の僕さ

たったひとつのふたつでみえてくる
ひとつひとつではみえなかった
大切なものがみえてくる

生きているのは僕さ
生きているのは君さ
生きているのは僕たちさ

そして今日も泣くだけ泣くよ
笑えるだけ笑うよ
たったひとつのふたつの姿のまま






















一瞬


今年もいつもの帰り道に
赤い曼珠沙華が咲き並び始めた

心の中に流れる季節が
ふたたび僕たちの間で重なった

君のまつげに落ちた埃を
僕の指先で掃った時
君は一瞬だけ目をとじた

君がいつも僕の肩先の埃を
手のひらで何気なく
そっと掃ってくれるようにね

僕も優しくなりたかったんだ
僕も一瞬だけ目をとじていた

風と風とが触れ合うように
どんな些細なことでもいい
通じ合うものが優しさなら

もっと生きてみたい
そう思えるから

時計の針が重なるように
どんな些細な一瞬でもいい
そこにあるものが優しさなら

もっと感じてみたい
そう思えるから

もっと優しくなりたいんだ
気がつけばいつも
君のことを探していた

今ここにある一瞬を
繰り返される一瞬を

そして
たった一度しかない一瞬を
君と感じていたいんだ

赤い曼珠沙華の咲く道の向こうに
赤い夕陽が沈んでゆく

似た者同士の一瞬が
ひとつの季節に重なり合って
深々と想いの赤へと溶けてゆく