セピア


君は覚えていなかったの
それとも忘れたふりしてたの

小さい頃
君に借りた一冊の絵本のこと

ずいぶん長い間
借りたままで
まだ僕の家にある絵本のことを

ささいなことでけんかして
気まずくなって
返しそびれたままになって

言い出したくても
言い出せなくなって
延々と時間だけが過ぎていった

あんなに鮮やかだった絵本
触れるのも怖いくらい
今では姿を変えてしまった

僕たちはおさななじみ

二人のあいだをそっと開いたら
鮮やかな絵本のように蘇る一頁

本当は返してほしかったのに
言えなかったこと

本当は返したかったのに
言えなったかったこと

向かい風にめくられながら
いつしか大人になった僕たち

ある日 勇気を出して
おたがいの暮らしの背表紙を

過去に並べて一つにしたら
僕たちの新しい絵本が始まった

僕たちはおさななじみ

あの頃の絵本ではなくて
僕たちこそが
気心知りつくした一冊の物語








**MYDEAR/ 新作紹介欄 掲載(一部改変)**

***どうもありがとうございました***

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック